発語の土台となる「言葉を使わないやりとり」に注目! 言葉が遅い子の親にできること

西村佑美先生

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言葉がなかなか出ないお子さんでも、「物事を理解していない」というわけではありません。アイコンタクト・表情・ジェスチャーなどの言葉以外のコミュニケーションに目を向けることが、発語の土台につながることも。

発達専門小児科医の西村佑美先生の著書『発達特性に悩んだらはじめに読む本』より、言葉以外のコミュニケーションの大切さに触れた一篇をご紹介します。


※本記事は、西村佑美著『発達特性に悩んだらはじめに読む本』(Gakken)より、一部を抜粋編集したものです。

アイコンタクト、ジェスチャーなど言葉を使わないやりとりが発語の土台

子どもはしゃべり出す前から、アイコンタクト、表情、発声、ジェスチャー(身振り、手振り)などを使って、人と関わる楽しさを経験し、相手の感情や物事を理解していきます。発語を促そうと、言葉のシャワーで話しかけたり、絵本や図鑑を必死で読み聞かせたり…言葉のインプットを急ぎがちですが、言葉を使わない非言語のコミュニケーションの力を先に身につけることが、発語の土台になるとされています。

信頼する専門家でママさん言語聴覚士 寺田奈々先生が、著書『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』で、言葉の表出の土台となる力をわかりやすく図解されています(コミュニケーション・ピラミッド)。いちばん下の土台の「注意&聴く」は、相手や物、出来事をじ~っと見る、話を聴くこと。相手に注意を向けて言葉や動作を模倣(マネ)しながら学び、言葉とコミュニケーション力は伸びていくのです。アイコンタクトは言葉とコミュニケーション力を伸ばす最初の重要な種まきになります。

言葉が話せなくても「理解している」と信じて子どもの「個」や「想い」を尊重

例えば、言語がわからない国へ行き、しゃべれないことで「この人はわかっていない」という目で見られたら、心細いしくやしいですよね。それと同じように、言葉がゆっくりの子は、物事を理解しているのに「しゃべれない=わかっていないだろう」という目で見られがちで、くやしい思いをしていると私は思っています。

「コミュニケーション=言葉のやりとり」と思われがちですが、「会話」はコミュニケーション手段のひとつに過ぎません。アイコンタクト、表情、ジェスチャーなどで子どもはママやパパに思いを表現し、一生懸命に伝えようとしているのです。そこに気がつけると、わが子のことがもっと「かわいい!」と感じるはず。会話がうまくできなくても、見て聞いて物事の理解は進んでいるのです。

「この子は、いろんなことをわかっている」というポジティブな視線で子どもを信じて接することで親子の信頼関係が生まれ、コミュニケーションを取りやすくなります。

子どもの好き・興味、ニコッとする場面に言葉を伸ばすチャンスあり

ASDタイプの子の言葉やコミュニケーション力の伸ばし方というと、療育の机上レッスンをイメージするかもしれません。それだけではなく、遊び、食事、着替え、入浴、オムツ替えなど、親子で過ごす一日の生活のあらゆる場面に学びと成長のチャンスがあ ることを教えてくれるのが「ESDM(アーリースタートデンバーモデル)」です。ESDMは、アメリカで開発され、ASDの子のコミュニケーションや遊びのスキルを上げるエビデンスのある超早期介入法として注目されているプログラムです。 「うちの子の好きな物、興味のあることって何かな?」「笑顔になるときは?」と探して、子どもの好き・興味を共有しながら親のほうに注意を引き、人と関わる楽しさを経験させます。 基本的に“子どものリード“に従ったり調子を合わせるテクニックは、遊びだけでなく生活のいろいろな場面で取り入れられます。

発達特性に悩んだらはじめに読む本

発達特性に悩んだらはじめに読む本』(西村佑美著/Gakken)

一般の小児科での診察や発達専門外来で、のべ1万組以上の親子を診た臨床経験、特性のある子の子育ての実体験をもとにした、医師&ママ目線でのアドバイス、指導を強みとした、西村佑美医師初の著書!